ウロウロしていたら日が暮れてきた。徐々に周辺が暗くなっていた。銀座にも夜の帳はあるのだろうが、それが下りるのはまだまだ先のこと。銀座通りに立ち並ぶビルには煌々と灯りが点いていて、路上にはまだまだ大勢の人が闊歩していた。町が静まり返るのにはまだ早い。夜の帳は早いところ下りてしまおうと思っても、下りてこられないのだろう。
日が暮れた後でも、都会にはどこかしらに明かりが灯っている。繁華街に行けばお店の灯りがあるし、信号機も光っている。住宅街であれば真っ暗かといえばそうでもなく、街灯があるし、家の光も外に漏れている。なかなか人工の光がまったくないところというのはないのだ。
東京で生まれ育った僕が、本物の夜の帳を見たのは大きくなってからのことだった。それはラオスのルアンパバーンだった。日が暮れてからメコン川沿いの道を歩くと、自動車のライトもないし、人家の灯りもないし、さらには曇っていたのか空に月も星も見えず、文字通り真っ暗だった。その時、僕は生まれて初めて「夜の帳」を体感したのだ。向こうから歩いてくる人の姿も見えないような暗闇の中で、これが本に出てくる夜の帳かと感心したのをよく覚えている。
2021年8月 人びと 東京 | |
銀座 親子 歩行者 |
No
12004
撮影年月
2021年2月
投稿日
2021年08月20日
更新日
2023年08月18日
撮影場所
銀座 / 東京
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
RICOH GR III