帽子をかぶった幼子を抱えて歩くお母さんの向こうに時計を戴いたビルが見える。銀座四丁目の交差点に建つ銀座和光の時計塔だ。ネオルネサンス調のビルは1932年に建てられたもの。つまり第2次世界大戦中の空爆でも破壊されることなく、90年近くもの間この場所に立ち続けている猛者だ。
銀座四丁目の交差点にドシンと建つ時計塔は銀座のシンボルとも言える存在で、銀座を訪れたことのある人なら一度は目にしたことがあるはずだ。それくらいビルそのものに存在感があるのと対照的に、その時計塔の中で営業している銀座和光という会社は存在感が薄い。なんとなく高級なものを販売しているお店というイメージしか持っていない人が多いのが実情ではないだろうか。
実際、銀座和光は日本国内外の腕時計・宝飾品・陶磁器・バッグなどの高級装飾品を販売するお店で、大勢の人がこぞって買い求めるようなものは取り扱っていない。大衆を相手に商売していないから、大衆相手の広告も打っていない。これが一般の人びとに知名度の低い要因のひとつだ。お金は持っていても地味な会社が運営しているのだろうと思いきや、違った。銀座和光を運営している株式会社和光は、誰でも知っている日本の大企業の子会社だ。親会社はSEIKOブランドで時計事業を展開しているセイコーホールディングスで、セイコーホールディングスの前身である服部時計店の小売部門を別会社にしたものなのだ。
同じセイコー・グループにあっても、SEIKOというブランド名と和光というブランド名ではかなりイメージが異なる。知らなければ、同じグループのブランドとは思わないだろう。意図したものなのか、意図せず違うイメージになってしまったのか分からないけれど、ブランド戦略は難しいと思わせる事例だ。
2021年5月 町角 東京 | |
時計 時計塔 銀座 縁のある帽子 親子 |
No
11902
撮影年月
2020年5月
投稿日
2021年05月10日
更新日
2023年08月22日
撮影場所
銀座 / 東京
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF