行き止まりになっていた路地を引き返し、またパサール・バル通りへと戻った。ここはジャカルタにある昔からの商店街だ。そこそこ広い通りの両脇にはお店がずらっと並んでいる。
見ていると靴やら服やらが店頭に並べている店が多い。どちらも今の僕には必要のないものだと思いながら、店頭のディスプレイを横目に見ながら通りを進んでいく。すると、とあるお店の横におじいさんが椅子に腰掛けているのに気がついた。横には小さなテーブルが置かれている。おじいさんは露天商だった。
テーブルの上にはコインとお札がいくつも置かれていた。おじいさんは古銭を売っていたのだ。ハヤム・ウルク通りでも古いコインを扱う露天商が出ていたから、ジャカルタには古いコインを売りたい人と買いたい人がそこそこいるのだろう。僕が日本人だと分かると、おじいさんはいそいそと古いお札の中から、数枚のお札を指し示して買えと言う。日本の軍票だった。第二次世界大戦末期、インドネシアは日本の統治下にあって、当時日本軍は軍票を発行していたらしい。
発行当時の価値がどれくらいだったかは分からない。でも、日本はすぐに敗戦し、オランダとの独立戦争に突入したインドネシアでお札として機能していたとは考えづらい。数年で紙屑になってしまったのではなかろうか。物品と販売して代金として軍票を受け取った人は大損してしまったに違いない。
軍用手票とは、戦争時において占領地もしくは勢力下にて軍隊が現地からの物資調達及びその他の支払いのために発行される擬似紙幣である。政府紙幣の一種と解されることもある。略して「軍票」とも呼ばれていることが一般的である。軍隊が通貨の代用として使用する手形ないし占領軍の交付する代用貨幣であり、最終的には、その軍隊が所属する政府によって軍票所持者に対し債務支払いを行う必要があるが、敗戦国の場合、支払能力がないため反故にされる場合もある。また第二次世界大戦の敗戦国である日本の場合、かつて戦時国際法上、個人に対する戦争被害を敗戦国が補償する義務がなく、また連合国側が軍票の支払い義務を免除したため、後に国際問題になったことがある。
No
11620
撮影年月
2020年1月
投稿日
2020年07月28日
撮影場所
ジャカルタ / インドネシア
ジャンル
動物写真
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF