道路脇に停められたワゴンに、黄色い紙の束が無造作に積まれていた。それは冥銭と呼ばれるもので、中国文化では死者の祭祀や鬼神への祈願の際に燃やされるものだ。煙となって冥界に届くと信じられている。台湾の寺院を訪れると、冥銭が奉納され、煙となって空に消えていく光景をよく目にする。それほど一般的なものだ。
その黄色い束の側面には、「福」という漢字が赤く描かれていた。きっと、これを使うことになる故人が幸福であるようにという願いが込められているのだろう。お金がなくて困ることはあっても、お金があって困ることはあまりない──残念ながら、この現実は死後の世界でも変わらないらしい。そんなことを考えると、金運のない僕にとっては、あまり嬉しくない話だ。
せめてもの救いは、あの世で使えるお金がこの世の通貨とは別の種類だということだろう。少なくとも現世での財産が、そのままあの世に持ち込まれるわけではないと信じたい。それにしても、冥銭を抱えて煙となるその瞬間、故人は何を思うのだろうか──そんな考えがふと頭をよぎった。
2017年5月 静物 台湾 | |
漢字 お金 台南 ワゴン 黄色 |
No
10134
撮影年月
2016年9月
投稿日
2017年05月07日
更新日
2024年12月09日
撮影場所
台南 / 台湾
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
SONNAR T* FE 55MM F1.8 ZA