写真の建物は港区立郷土歴史館だ。区立の博物館としてはかなり立派な佇まいをしている。それもそのはず、もともとは公衆衛生の向上を目的とした国立公衆衛生院として、1938年に建造された建物なのだ。国が作ったとしても、かなりの費用が掛かったはずと思いきや、この建造費用はアメリカのロックフェラー財団からの寄贈で賄われているらしい。当時のアメリカから見れば、日本は公衆衛生の悪い貧しいアジアの国でしかなかったのだろう。第二次世界大戦前のGNPは、日本とアメリカで10倍程度の差があったというから仕方がない。そのような状況の中でよく日本政府はアメリカに戦争を挑んだものだと皮肉を込めて感心してしまう。
時は流れて、国立公衆衛生院の機能は国立保健医療科学院の一部となって、埼玉の和光市に移転してしまった。建物だけがこの場所に残されたのだ。そして、建物は国から港区の所管に移り、今となっては博物館として一般公開されているのだった。
No
11208
撮影年月
2019年3月
投稿日
2019年09月24日
撮影場所
白金台 / 東京
ジャンル
建築写真
カメラ
RICOH GR III