浴室の窓に人影が映ると途端にサスペンスの香りが漂ってくる

旧朝香宮邸の浴室
旧朝香宮邸の浴室
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東京都庭園美術館は朝香宮鳩王が1947年に皇籍離脱するまで暮らした邸宅だった。そのため、大広間、次室、小客室、大客室、大食堂などの接客用のスペースがあるだけでなく、書斎、居間、寝室などのプライベートな空間も設けられている。そして、もちろん浴室もある。写真がその浴室だ。

戦前に建てられた瀟洒な洋館というと湯島にある旧岩崎邸もそうだけれど、ひと括りに「戦前に建てられた洋館」と言っても旧朝香宮邸と旧岩崎邸では建てられたときの状況がかなり違う。大きな違いは住んでいた人の生活様式だ。岩崎家の人びとは接客用のスペースは西洋式にしたものの、プライベートな空間は洋館の隣に建てた書院造の和館で過ごすという本音と建前のような生活を送っていたのに対し、ここに和館はない。朝香宮邸には和式の生活空間はなく、朝香宮の方々は表向きの接客空間もプライベートな空間もどちらも洋式で過ごしていたのだ。旧岩崎邸が建てられたのは1896年、旧朝香宮邸が建てられたのは1933年と両者の建築年は40年近く離れている。40年の間に上流階級の間では西洋式の日常生活を送るのが普通になったようだ。

の外から日が差し込んでいる浴室のレトロなバスタブを眺めていると、ふいに窓の外に人影が見えた。その光景はなんだかサスペンス映画のワンシーンのようだった。のどかな浴室に日差しとともに剣呑な空気も入って来たような気がした。

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ENGLISH
2021年6月 町角 東京
入浴 人影 博物館・美術館 白金台

PHOTO DATA

No

11948

撮影年月

2020年11月

投稿日

2021年06月25日

更新日

2023年08月22日

撮影場所

白金台 / 東京

ジャンル

ストリート・フォトグラフィー

カメラ

RICOH GR III

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