浦安というと真っ先に思い浮かぶのは東京ディズニーリゾートだ。でもそのイメージは東京ディズニーランドがオープンした1983年以降のこと。もともとは江戸川の派川である境川両岸に集落が立地した半農半漁の村だったところだ。市域の約4分の3を1960年代以降に造成された埋立地が占めている今の浦安を歩いても、半農半漁だった時代を想起させるものは少ない。その時代の浦安は山本周五郎の「青べか物語」の中に冷凍保存されているだけだ。
そうは言っても、境川の畔を歩くとかつての浦安を偲ばせるものも幾つか残っている。そのひとつが旧宇田川家住宅だ。1869年に建てられという商家で、第二次世界大戦後は診療所として使用されていたものが保存されている。今では住宅街になっているものの、かつてこの辺りは清瀧神社の門前町だったようで、この場所で米屋や油屋、雑貨屋、呉服屋など幅広く商売していたらしい。
店舗の雰囲気を修復した店の間の上にある2階に上がると、部屋は薄暗く裸電球が心もとなく点いているだけだった。この電球は建設当時には無かったもの。おそらく旧宇田川住宅に備え付けられたのも昭和になってからだろう。
絵画作品は限りなく画家の手で作成されたオリジナルに近い形に修復するのが求められるけれど、建造物の修復にはそのようなルールはない。建造物は鑑賞するだけでなく利用もするものだから、いくらオリジナルに近いとはいえ、わざわざ不便な形にする修復は行わないのだ。その結果、世の中に数多ある保存対象になっている歴史的建造物の中には何世代にも渡るテクノロジーが混在していて、専門家が見たらオーパーツみたいになっているのだと思う。
2022年1月 千葉 静物 | |
薄暗さ ランプ 電球 浦安 |
No
12136
撮影年月
2021年11月
投稿日
2022年01月05日
更新日
2024年01月09日
撮影場所
浦安 / 千葉
ジャンル
ミニマル写真
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF