エスカレータが暗闇の中で静かに動いていた

暗闇の中のエスカレータ
暗闇の中のエスカレータ
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かつて汐留には鉄道駅があった。新橋停車場だ。ここから横浜の桜木町へ向けて、日本初の鉄道が走り出したのだ。でも今となっては新橋停車場は跡形もない。跡地にモニュメントが建っているものの、あたりは高層ビルだらけになっている。現在の新橋駅前にはSLが置かれていて、そこが鉄道発祥の地であるかのような顔をしているけれど、実際に最初の鉄道駅があったのは今でいう汐留だ。現在の新橋駅は1914年まで烏森駅と呼ばれていて、違う駅だったのだ。

この日は汐留に用があったので、地下鉄で汐留に来ていた。まだ朝早かったので、昼間には大勢の人が歩いている地下通路も閑散としていた。通路は薄暗く、高層ビルの入り口もまだ閉まっている。薄暗い地下通路の中でダイレクトリーとエスカレータだけが煌々と光っていた。地上階へと続くエスカレータは縁が光っていて、ちょっと神々しい。眺めていると、そのエスカレータは暗黒の地下世界から平穏な地上階への避難経路のような気がしてきた。光に導かれるようにして、僕も地上階へと向かった。

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ENGLISH
2020年4月 町角 東京
薄暗さ エスカレータ シルエット 汐留

PHOTO DATA

No

11497

撮影年月

2019年11月

投稿日

2020年04月21日

更新日

2023年09月05日

撮影場所

汐留 / 東京

ジャンル

ストリート・フォトグラフィー

カメラ

RICOH GR III

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