鹿港の静かな通りの先に、威厳ある屋根の反りが姿を現した。媽祖を祀る鹿港天后宮だった。立派な装飾が施された屋根の下には、赤い幕が垂れ、香炉の煙がゆっくりと天へと立ちのぼっている。
天后宮という名が示す通り、ここには海の守護神・媽祖が祀られている。かつて鹿港が港町として栄えていたころ、多くの船乗りたちがこの地を訪れ、出航の前に必ずこの廟に立ち寄った。荒れる台湾海峡を渡る前に、媽祖に無事を願い、祈りを捧げる。それは日々の営みのなかに深く根付いた儀式のようなものだった。
その名残はいまも続いている。ちょうど僕が訪れたときも、年配の男性が、静かに手を合わせていた。日常のひとこまのようでありながら、背後には長い信仰の歴史が積み重なっているのだ。
2025年6月 人びと 台湾 | |
鹿港 寺院 参拝客 |
No
12882
撮影年月
2024年12月
投稿日
2025年06月28日
撮影場所
鹿港 / 台湾
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R V
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF