ヤンゴンの片隅で、男が指の間に葉巻を挟み、実に満足そうに煙をくゆらせていた。ミャンマーでは、煙草よりも葉巻の方がずっと安いらしい。なるほど、路上で見かける男たちの多くは紙巻き煙草ではなく、この素朴な葉巻を指にしている。聞けば「チェルート」と呼ばれるもので、乾燥した葉に刻んだタバコ葉やハーブ、時には甘い香りのする乾燥果実まで詰め込むのだそうだ。西洋の高級葉巻を連想してはいけない。あちらは洒落た嗜好品、こちらは庶民の生活必需品といった風情である。
ヤンゴンの街路は車と自転車タクシーと人でごった返し、騒音と埃が容赦なく降り注ぐ。そんな中、葉巻を吸う男の表情は妙に落ち着いている。葉巻の煙は安物の線香のようにやや甘ったるい匂いを放ち、鼻腔にまとわりついて離れない。だが、嫌煙権という概念はまだ芽吹いていないらしく、誰も迷惑そうな顔ひとつ見せない。むしろ煙の中に包まれること自体が、日常の一部なのかもしれない。
| 2010年8月 ミャンマー 人びと | |
| 葉巻 手 男性 煙 腕時計 ヤンゴン |
No
4404
撮影年月
2010年3月
投稿日
2010年08月01日
更新日
2025年09月10日
撮影場所
ヤンゴン / ミャンマー
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM