この日に代官山にやって来たのは、ファッショナブルな街で買い物するためではなかった。代官山の一角に保存されている築100年の住宅を見るためだった。東京府会議長や渋谷区会議長を歴任した朝倉虎治郎という人物によって建てられた和風2階建ての住居が、お洒落な八幡通りからそれほど離れていないところに保存されているのだ。
すぐ近くには西郷隆盛の実弟である西郷従道が屋敷を構えていた西郷山公園があり、かつてはそこに明治に建てられた和館と洋館があったのだけれど、和館は第二次世界大戦の空襲で消失し、洋館は1963年に愛知県犬山市の明治村に移築されてしまい残っていない。つまりこの旧朝倉家住宅がこの辺りで現存する最も古い住居なのだ。
敷地に入るとすぐ先に和風の木造建築が見えた。都内に残る古い住宅というと、湯島にある旧岩崎邸や目黒にある旧朝香宮邸(現東京都庭園美術館)があるけれど、ここはどちらとも違っている。旧岩崎邸は日常生活を送る和館と接客用の洋館が両方建っていて(西郷従道の邸宅もそうだった模様)、旧朝香宮邸は日常生活も接客も洋館で行っていた。それに対して、朝倉家の人びとは日常生活も接客も和館で行っていたのだ。
旧朝倉家住宅が建てられたのは、旧岩崎邸と旧朝香宮邸が建てられた中間で1919年のこと。上流階級の人びとが、日常生活を和式で表向きの接客などを洋式で行うスタイルから、全ての生活を西洋式で行うように移行している中で、ここ代官山では西洋式なんてどこ吹く風、和風の生活が営み続けられていたのだ。
和風住宅の中を歩いていると、祖父の家を訪れたような気がして落ち着く。しかし同時に思う。和風建築は夏は暑すぎるし、冬は寒すぎるので今どきのマンションに住んだほうが心地良いのではないだろうかと。
2021年8月 建築 東京 | |
代官山 家屋 博物館・美術館 屋根 窓 |
No
11993
撮影年月
2021年2月
投稿日
2021年08月09日
更新日
2023年08月18日
撮影場所
代官山 / 東京
ジャンル
建築写真
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF