頃合いを見計らって、雨の中を再び歩き出した。雨はなんとか歩けるくらいに弱まっていた。チャオプラヤー川に架かっているピンクラオ橋を渡り、バンコクのプラナコーン区へと足を踏み入れた。ここは有名なカオサン通りや王宮がある地区で、泊まっている宿もこの地区にある。僕が向かったのは、この地区の北にあるプラスメンという砦の跡だった。
バンコクはチャオプラヤー川のデルタ地帯に造られている。町を歩くとよく分かるのだけれど、この町には坂がほとんどない。まっ平らなのだ。ワット・サケットというお寺のある丘があるじゃないかと思う人もいるかもしれないけれど、あれは人工の丘だ。町を守る自然の障害がないため、かつては要所要所に砦が設けられていた。プラスメンはそのひとつだ。ちなみに砦はミャンマーからの攻撃に備えて築かれたもの。今では信じられないけれど、かつてミャンマーはタイの仮想敵国だったのだ。
砦に辿り着くと、そこには真っ白な要塞が建っていた。思いの外規模は小さい要塞だ。建設当時はバンコクという町の端にあったのだろう砦も、今ではすっかり家々に囲まれている。砦そのものにあまり興味を惹かれない代わりに、要塞の堀に沿って建っている家々の方がずっと面白かった。もう使われることのない真っ白な要塞の脇に民家が建ち並んでいて、その中のひとつは窓越しに水場(台所だろうか)が見えた。上半身裸の男が立っていて、ちょうど蛇口をひねっていた。そして男の背後にはドラえもんの壁掛けが見えた。ビジュアル的に映えない歴史的な遺構よりも、日常生活のある民家の方が気になってしまうのは多々あることだ。
2018年9月 人びと タイ | |
バンコク 家屋 水場 窓 トタン屋根 |
No
10728
撮影年月
2017年9月
投稿日
2018年09月11日
更新日
2024年02月01日
撮影場所
バンコク / タイ
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
SONNAR T* FE 55MM F1.8 ZA