ホーチミン市の西側に広がるチョロン地区は、かつての中国人街。今でもあちこちに華人の文化が色濃く残っていて、通りを歩けば中国語の看板や香の匂いが風に混じってくる。
そんな町角に、ギアアンホイクアン寺がある。潮州系華人コミュニティが19世紀に建立した寺院で、かつては移民たちの集会所、いわば心のよりどころだった場所だ。だが同時にこの建物は、関羽を神格化した関帝を祀る寺でもある。商売の守り神としても知られるこの武将は、華人社会にとって特別な存在なのだろう。
立派な門の中を覗くと、向かい合う人びとの姿があった。ひとりは男性、もうひとりは静かに座る女性。ふたりとも、とくに会話を交わしている様子はなかった。
それは祈りの最中でもなければ、観光客の相手をしているわけでもない。どこか、ただそこに座っているという感じだった。強い日差しを避け、木陰のように涼しい境内でひと息ついているのかもしれない。あるいは、門を通る誰かを見つめているうちに、時が止まってしまったようにも見えた。
寺の奥では色とりどりの装飾がわずかに揺れていた。天井から吊るされた提灯、きらびやかな彫刻、香炉の煙。すべてが静かに交差し、暑さのなかでほのかな静寂をたたえていた。
2009年6月 町角 ベトナム | |
中華街 入り口 門 ホーチミン市 寺院 |
No
2866
撮影年月
2009年3月
投稿日
2009年06月07日
更新日
2025年06月15日
撮影場所
ホーチミン市 / ベトナム
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM