マラッカの歴史的な情緒が漂うチャイナタウンの通りを歩いていた。ここにはマレーシア最古といわれる由緒正しき中国寺院が建っている。青雲亭(チェンフーンテン)がそれだ。1600年代のポルトガル支配時代に中国人によって建立されたと伝わる寺院で、今では街ごとユネスコの世界遺産にも登録されている。この格式高い寺院だが、その教義の中身を覗いてみると実におもしろい。道教と儒教と仏教という、東アジアの主要な三つの宗教がすべて仲良く混ざり合っているのだ。それぞれの都合の良いご利益をちゃっかり取捨選択した結果なのだろう。見方によっては節操がないとも思えるが、これほど合理的で至れり尽くせりな神仏のシステムもない。ここへ来れば、ありとあらゆる願い事に対応する窓口が揃っているわけだ。
その三つの宗教がごちゃ混ぜになった便利極まりない青雲亭の境内へ足を踏み入れる。すると、そこは地元の人々の熱烈な信仰心によって随分と活気に満ちあふれていた。本堂とおぼしき建物の前には、どっしりとした大きな香炉が据え付けられている。そこへ線香を手にした参拝客たちが次から次へとやって来ては、熱心にお参りをしている最中であった。ちなみに東南アジアの中国寺院で使われる線香は、日本の仏壇に供えるような細く儚げなものとはまるで造りが違う。竹の細い芯の周りに香料の粉末を分厚く練りつけた構造になっている。そのため、まるで手持ち花火の火薬棒のように長くて太いのが特徴だ。
その手持ち花火の棒のように長くて太い線香を両手で掲げている参拝客の姿を、僕は少し離れた場所からぼんやりと眺めていた。緻密な木彫りの装飾が黒々と施された立派な柱や梁からは、細かな模様が描かれた巨大なランタンが吊り下げられている。その下で、白いシャツを着た女性たちが、これまた長い線香をいそいそと香炉へと突き立てていた。道教の神様も仏様も孔子様も、この太い線香から四方八方へ立ち上る猛烈な煙に巻かれて、日々さぞかし目を白黒させているに違いない。
| 2009年4月 町角 マレーシア | |
| 中華街 漢字 線香 マラッカ 宗教 寺院 世界遺産 |
No
2666
撮影年月
2008年12月
投稿日
2009年04月08日
更新日
2026年07月14日
撮影場所
マラッカ / マレーシア
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM