迪化街を歩き回っているうちに、日が傾き始めた。とろんとした黄昏の光が道を柔らかく包み込み、路面は金色に輝いている。その中を走る自動車たちは、影絵のようにシルエットになっていた。通りには、多くの人々が家路を急ぐ姿があった。
でも、僕にとって家路はここにはない。僕の家はこの場所から遥か遠く、そして仮の住まいに戻るにはまだ少し早すぎる時間だった。だから僕はただ立ち止まり、黄昏に染まった道を眺めていた。
その光景を見ていると、一日が静かに終わろうとしているのを肌で感じる。そして、不意に子どもの頃を思い出していた。なぜだか分からない。今、目の前に広がっているのは異国の風景なのに、記憶の中から掘り起こされたように故郷の情景が浮かび上がってくる。黄昏には、何かしら不思議な力があるのかもしれない。遠く忘れかけていた感情をそっと引き寄せ、手渡してくるような。
2017年5月 台湾 乗り物 | |
自動車 シルエット 通り 台北 |
No
10160
撮影年月
2016年9月
投稿日
2017年05月30日
更新日
2024年11月30日
撮影場所
台北 / 台湾
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
SONNAR T* FE 55MM F1.8 ZA