高層ビルが林立する巨大な繁華街、新宿へとやって来た。甲州街道に架かる無機質な歩道橋の上に立ち、新宿御苑の方角をなんとなく眺めてみる。ここから緑豊かな庭園そのものは見えない。しかし、ガラスとコンクリートの塊のようなビルがいくつも視界を遮る。今やこここそが東京の中心であるかのような顔をしている。だが、江戸時代にはここらは江戸の境界線の外側であった。四谷に設けられた大木戸と呼ばれる関所が江戸の正式な出入り口だ。そこから先はただの寂しい郊外に過ぎなかったのである。
その江戸の境界線の外側であった寂しい郊外に、新しく作られた臨時の宿が内藤新宿である。五街道の一つである甲州街道の最初の宿場町として、内藤家の下屋敷の一部を削って開設されたらしい。名前に「宿」の文字が含まれているのはその名残だ。江戸のすぐ目と鼻の先に位置していた。そのため、旅人だけでなく、日頃の憂さ晴らしを求める江戸の町人たちが大挙して遊びに訪れた。宿場町には旅籠屋や茶屋、さらには非公認の遊廓である岡場所がつきものだ。そういう意味では、この地は昔から品行方正な場所ではない。怪しげなエネルギーに満ちた盛り場だったのである。
その怪しげなエネルギーに満ちた盛り場の中心を貫く現在の甲州街道を、僕は歩道橋の上から見下ろしている。車通りは意外にも空いていた。しかし、信号が赤に変わると、2台の白いバスが停止線の前で律儀に身を停めた。それを待っていたかのように、左右の歩道から無数の歩行者たちが一斉に横断歩道へと溢れ出してきた。
| 2019年10月 町角 東京 | |
| 歩行者 横断歩道 新宿 通り 信号 |
No
11226
撮影年月
2019年4月
投稿日
2019年10月07日
更新日
2026年06月12日
撮影場所
新宿 / 東京
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
RICOH GR III