水仙宮市場のほとんどのお店がすでに営業を終えていた。電灯が消え、通路は薄暗く、静まり返っていた。その中を僕はゆっくりと歩いていた。人気のない市場には、一日の喧騒が嘘のような静寂が漂っていた。
そんな中、遠くにまだ明かりのついている一角が目に入った。誰もいなくなった市場で、そこだけがぽつんと蛍光灯の光に照らされている。そこには男がひとり、静かに働いていた。市場の中で唯一の動きがある場所だった。男は何かを仕上げるように、黙々と作業を続けている。
その姿には、終わりゆく一日の中でやるべきことを終えようとする責任感のようなものを感じた。僕は足音を立てないように気をつけながら、仕事の邪魔をしないようにそっとその場を離れた。市場の静けさが一層際立つような時間だった。
2017年3月 人びと 台湾 | |
薄暗さ 市場 台南 |
No
10077
撮影年月
2016年9月
投稿日
2017年03月19日
更新日
2025年01月18日
撮影場所
台南 / 台湾
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
EF85MM F1.2L II USM