かつて東海道の品川宿だった商店街を抜けて目黒川のところを曲がると、すぐに立派な鳥居が視界に入ってくる。荏原神社だ。地味な神社だけれど、創建は709年と古い。江戸時代には将軍から領知朱印状を拝領している由緒ある神社だ。
境内に目を惹くような建造物は建っていないものの、気になるのはその御祭神だ。豊受姫之神、天照皇大神、須佐男之尊、手力雄之尊などを祀っている中で中央に祀られているのは高龗神だ。古事記と日本書紀にも登場し、京都の貴船神社にも祀られている神様とはいえ、それほど存在感ある神様ではない。日本神話に登場する神様の中でもそれほどメジャーではない高龗神がセンターを務めているのだ。
日本国語大辞典によると、「高」は山峰を意味し「龗」は水をつかさどる蛇体の神のことで、高龗は祈雨・止雨の信仰を受けた神様なのだという。平たく言うと水の神様だ。古来、生命の生成と存続にとって不可欠な水を独立の神格を持つものとして崇拝している例は多く、高龗神もそのひとつだ。しかしながら豊穣をもたらす水の神様も、今となっては影が薄い。このご時世、豊穣を約束してくれる神様よりも恋愛を成就させてくれる神様の方が人気を集めるような気がしてならない。
2021年5月 建築 東京 | |
品川 神社 鳥居 |
No
11910
撮影年月
2020年8月
投稿日
2021年05月18日
更新日
2023年08月22日
撮影場所
品川 / 東京
ジャンル
建築写真
カメラ
RICOH GR III