急峻な階段の脇に梅の紋章の付いた提灯が掲げられていた。そう。ここは菅原道真を祀った神社、牛天神北野神社だ。東京にも菅原道真を祀った神社は多い。都心だけを考えてみても湯島に湯島天満宮があるし、平河町に平河天満宮がある。都心からちょっと離れると、国立に谷保天満宮という由緒ある神社が建っている。
そのような中、文京区春日の住宅街にひっそりと建っているこの神社はちょっと毛色が違う。主祭神はもちろん菅原道真なのだけれど、狭い境内の一角に貧乏神を祀った祠があったという神社なのだ。貧乏だった旗本が夢で見たお告げの通りに貧乏神を祀ったところ、貧乏から脱却できたのでその祠をここ牛天神北野神社に移して祀っていたのだという。
貧乏神にお参りすると貧乏神に顔と名前がバレて自分のところにやってきてしまいそうな気がするけれど、きちんと祀っていれば自分のところには来ない仕組みなのだろう。長沢利明さんの「江戸東京の庶民信仰」という本によると、「本社よりも参詣者多く神職にとりては最も福神なり」と皮肉られていたというから人気のある神さまだったようだ。
公式ホームページに見ると、貧乏神を祀っていたことの記載はあるものの、あくまでも過去の話の扱いになっていて、今現在の小さな祠は芸能の神であるアメノウズメノミコトと道の神であるサルタヒコノミコトの夫婦とウカノミタマノミコトを祀っているとなっている。さり気なく存在を消されてしまった貧乏神はどこに行ってしまったのだろう。
2022年1月 町角 東京 | |
春日 提灯 神社 階段 |
No
12141
撮影年月
2021年11月
投稿日
2022年01月10日
更新日
2023年08月16日
撮影場所
春日 / 東京
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF