階段の先を見上げると青空が見えた。ここは昔ながらのスーパーマーケットだ。大資本が運営していて、誰しもが名前を耳にしたことのあるようなスーパーマーケットではなく、地元に慣れ親しんだ人でなければその場所もどこにあるのかよくわからないものだ。紙の新聞を購読していれば、折込チラシでも入っているのかもしれないけれど、購読していない僕にはそのか細い声も届かない。このスーパーマーケットを見つけたのは偶然だった。
武蔵小山の駅からちょっと離れた商店街の中程にあるスーパーマーケットは、古い3階建ての建物の奥にこっそり存在していた。入り口に看板がでているわけでもなく、ちょっとした好奇心で通路の奥に足を踏み入れなかったら、すぐ近くに住んでいるのにもかかわらずここにスーパーマーケットがあるのに気が付かなかったに違いない。
スーパーマーケットだけに1階部分には青果店や八百屋やら魚屋などが並んでいる。けれども3階建ての2階と3階には足を踏み入れたことはない。どうやら上の階は住宅になっているようで、スーパーマーケット内を歩いていても、導線の中に上の階へ続く階段は登場しない。さりげなく設けられた階段を見つけたので階段の下から上を見上げると、古びた看板の先に青い空が顔を覗かせているだけで、やはりお店のあるような雰囲気は微塵もなかった。
2021年8月 町角 東京 | |
武蔵小山 看板 空 階段 |
No
11996
撮影年月
2021年2月
投稿日
2021年08月12日
更新日
2023年08月18日
撮影場所
武蔵小山 / 東京
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
RICOH GR III