ミョーマ市場の端にやって来ると、男が拡声器を片手に立っていた。この男も市場で働いていた人びとのひとりだ。そして、この男が扱っていた商品は紅白のUSBケーブルだった。ミャンマーを旅をしたのは今回で2度目だったけれど、今までUSBケーブルを売り歩いている行商人を見たことはない。この男とその向こうに立っている同僚が僕が目にした唯一のUSBケーブルの行商人だ。
民主化後、ミャンマー経済が急速に発展するにつれてUSBケーブルに対する需要も急増しているに違いない。でも、残念ながらここではUSBケーブルの売れ行きは芳しくないようだ。男は売り物のUSBケーブルと同じように真っ赤な拡声器を通して売り口上を叫んでいるものの、それを耳にして近寄ってくる人の姿は見当たらない。男の声は虚しく空に仕込まれている。見ていると、男は焦燥してきつつあるようで、浮かない顔をしながら額の汗を拭っていた。男の肩の上にはまだまだ大量のUSBケーブルが残っている。
No
11007
撮影年月
2018年9月
投稿日
2019年05月11日
撮影場所
タニン / ミャンマー
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
SONNAR T* FE 55MM F1.8 ZA