タニンで足を踏み入れた住宅街には穏やかな雰囲気が漂っていた。自転車であっても走り抜けるのが困難な細い路地にエンジンの音は聞こえてこない。自動車はおろか自転車さえも走っておらず、聞こえてくるのは地元の人たちの生活音ばかりだ。かといって、人びとは騒々しく音を立てて生活しているわけでもないから、住宅密集地にもかかわらず静かだった。ほとんどの人は静黙に過ごしている。
写真の女性も静かに路地で時を過ごしていたひとりだ。何もするわけでもなく女性は家の玄関先にどっしり座り込んでいた。あまりにじっとしているので、目の前に来るまで女性がその場に腰を下ろしているのに気が付かなかったくらいだ。そんな僕とは対照的に女性はちょっと前から僕が近づいてきているのに気が付いていたようで、僕が前に立ち止まっても驚かない。こうなることを予期していたかのようだ。
視線をカメラに据えた女性は顔だけでなく腕にもタナカがびっしりと塗られていた。タナカは化粧品であると同時に日焼け止めとしても使われるというけれど、女性の塗り方を見る限りでは、この女性は化粧品として使っていなようだった。少しでも日光を遮るように分厚く塗った結果、体中に刷毛の後がくっきりと残っていた。
2019年6月 ミャンマー 人びと | |
入り口 花柄 タナカ タニン 女性 |
No
11047
撮影年月
2018年9月
投稿日
2019年06月10日
更新日
2024年07月15日
撮影場所
タニン / ミャンマー
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
SONNAR T* FE 55MM F1.8 ZA