歩いているうちに、寺院に辿り着いた。寺院の一角には黄色い冥銭が山のように積み上げられていて、何人かの人々がそれを仕分けるような作業をしていた。祭壇の前にはお供え物を置くためのテーブルが並べられている。どうやら、これから何かしらの祭りが催されるようだった。
冥銭というのは、その文字通り、あの世で使うお金のことだ。もちろん現世でそれを持ってお店に行ったところで、ただ怪訝な顔をされるだけだろう。日本にも似たような習慣はあるけれど、ここまで一般的ではない気がする。そもそも、日本では冥銭は三途の川を渡るための船賃という意味合いが強い。けれど、ここの冥銭は船賃には明らかに多すぎる。これだけの量が必要だというのは、それだけ中華文明の人々にとって、お金が重要なものだからなのだろう。
その黄色い紙の山に惹かれるように近寄ってみると、作業をしていた一人の男が僕に気がついた。そして、笑顔でピースサインをしてくれた。その仕草はどこか無邪気で、目の前に積まれている膨大な冥銭の重みとは対照的だった。
2017年5月 人びと 台湾 | |
男性 ピースサイン 台北 |
No
10158
撮影年月
2016年9月
投稿日
2017年05月28日
更新日
2024年12月02日
撮影場所
台北 / 台湾
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
SONNAR T* FE 55MM F1.8 ZA