台湾の古都である台南を歩いていると、やたらと細い道に出くわす。清朝時代から続く「巷弄」と呼ばれる路地が、まるで蜘蛛の巣のように入り組んで街を形成しているのだ。もともとは外敵の侵入を防いだり、風水の影響を考慮したりして、わざと曲がりくねって作られているのだという。両脇には古びた家々や商店が隙間なくひしめき合っていて、見上げても空がひどく狭い。歩いているだけでだんだんと方向感覚が狂ってくるのだが、この薄暗くてどこかのどかな雰囲気は、へそ曲がりな僕の好みにひどく合致している。
そのひどく合致している好みを一方的に押し付けて、こうした古い町並みが再開発されることなくずっと残って欲しいなどと、僕は無責任に願ってしまう。だが、実際にここに住んでいる地元の人間がそれを望んでいるかどうかは、全くの別問題である。彼らにしてみれば、車も通れないような不便な道や隙間風の吹く古い家よりも、広く舗装された近代的な道路と新しいマンションの方がよっぽどマシだと思っているかもしれない。気をつけないと、古い景観をありがたがるのは、エアコンの効いたホテルに泊まる通りすがりの旅人の勝手な独り善がりになりかねない。
その勝手な独り善がりを頭の片隅で反省しながらも、僕はやはり好んで薄暗い道をふらふらと歩き続けていた。屋根の隙間から、柔らかな午後の光がアスファルトに差し込んでいる。そのまま視線を真っ直ぐに向けると、少し先の日の当たっている場所に、ごちゃごちゃとした漢字だらけの古い看板の群れが見えた。よく見ると、その隙間に黄色い提灯が縦にいくつかぶら下がっていた。
| 2017年1月 町角 台湾 | |
| 路地 提灯 看板 台南 |
No
9994
撮影年月
2016年9月
投稿日
2017年01月06日
更新日
2026年05月15日
撮影場所
台南 / 台湾
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
SONNAR T* FE 55MM F1.8 ZA