東京駅近くの丸の内に建っている丸の内ビルディング(通称丸ビル)は2代目だ。今では地上37階地下4階の巨大な高層ビルになっているものの、かつての丸ビルはたかだか地上は9階までしかないビルだった。つまり建て替えによって9倍くらい高くなった。にもかかわらず面白いのは、建て替え前の丸の内ビルディングの方が年配の人びとのイメージの中でしばしば大きな存在であることだ。
そのようなイリュージョンの根本にあるのは建て替え前の丸の内ビルディングのイメージが抜群に優れているからのよう。確かに物理的な大きさだけで言ったら、今のビルの方がずっと大きい。でもかつてのビルは「東洋一のビル」と呼ばれるくらいの大きさを誇っていただけでなく、オフィスビルの低層階を一般客に開放しショッピング・モールなどを展開するという今では一般的になっている形態を先駆的に導入したというような先進的なイメージが絡みついているのだ。
平たく言うと昔は丸ビルにファッショナブルなイメージがあったのだ。1929年に大ヒットした歌謡曲・東京行進曲にも登場するし、内田百間の「東京日記」や岡本かの子(岡本太郎の実母)の「丸の内草話」などの小説にも登場している。今となっては綺麗とはいえ、なんの変哲もない丸ビルが人びとに大きな印象を与えていたなんて時代の変遷を感じてしまう。
2022年8月 町角 東京 | |
エレベータ 丸の内 |
No
12343
撮影年月
2022年5月
投稿日
2022年08月06日
更新日
2023年08月11日
撮影場所
丸の内 / 東京
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS BATIS 1.8/85