中途半端に開いた扉は人の好奇心を刺激する。完全に開いていれば、言われるまでもなく中を覗いても問題ないだろうし、ひょっとしたら中を覗いてほしくて扉を開けているのかもしれないのに対し、中途半端に開いている扉は本当は覗いてはいけない空間を覗けるチャンスのように思えてしまう。これで扉の横に「覗き見禁止」なんて張り紙がしてあれば完璧だ。ほとんどの人が好奇心を抑えきれず中を覗いてしまうに違いない。
世田谷の代沢にある森巌寺に建つ不動堂・閻魔堂の扉もそうだった。覗き見を禁止する張り紙こそなかったものの、まるで僕を誘うかのように扉が中途半端に開いていた。誰かに閉じられてしまう前にいそいそと近づいていくと、扉の隙間から赤い顔の人間のようなものが鎮座しているのが見える。閻魔大王だ。
閻魔大王は目を大きく見開き、怒った顔をしていた。人間が再び罪を犯さないように叱咤しているのだ。その様子を見た僕は、僕ではない誰かが叱咤されているのだと勝手に解釈したけれど、あとになって考えてみると、僕に向かって叱咤していたようにも思えてきた。
2022年4月 静物 東京 | |
代沢 神 扉 寺院 |
No
12222
撮影年月
2022年2月
投稿日
2022年04月01日
更新日
2023年08月15日
撮影場所
代沢 / 東京
ジャンル
静物写真
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS LOXIA 2/35