道教寺院というのは、一歩足を踏み入れると、そこが単なる一室の信仰空間ではないと気づかされる。鹿港天后宮も中央に媽祖を祀る本殿がありながら、その周囲には多種多様な神々が、それぞれの小さなお堂に鎮座している。文昌帝君、関聖帝君、城隍爺──名前も役割も異なる神々が、それぞれのご利益と共に祀られていて、境内全体がまるで神々のデパートのようになっているのだ。言い換えれば、あるとあらゆるご利益に対応できるようになっているとも言える。
路地のように細く続く回廊を歩きながら、僕は一つひとつの香炉に立ち止まり、祈る人々の姿を目にした。観光客ではない、地元の人々だ。真剣に願いごとを唱える人、手を合わせたまま静かに立ち尽くす人──ここは、日常と信仰が地続きになっている場所だった。
気がつけば、僕も神々の静かな気配に包まれていた。
2025年7月 町角 台湾 | |
廊下 鹿港 寺院 |
No
12890
撮影年月
2024年12月
投稿日
2025年07月01日
撮影場所
鹿港 / 台湾
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R V
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF