その塔は何の変哲もない江古田の住宅街に突如として現れる。周囲の建物から頭ひとつもふたつも抜きん出たコンクリートの塔は周辺住民の動向を監視する監視塔のようにも見えるし、天文台のようにも見える。不思議な建造物だ。正体が何であれ周囲に建つ住宅とは一線を画していて、異様な雰囲気を放っている。
この奇妙な建造物の正体は1929年に建てられ1966年まで使われていた配水塔。東京23区北西部への給水を安定・安全に行うために設けられたタンクなのだ。給水を安定・安全に実施するには充分な水圧が必要で、水圧が不足すると建物の上階まで水が届かなかったり、地下水に含まれている微生物や砂、肥料、毒物などで汚染される危険が生じてしまう。そのためこのような配水塔を設け、重力を利用して給水管に水圧を与えていたのだ。
配水塔が設けられる理由を知ると配水塔は都市生活に必要不可欠な施設に思えてくる。しかしながら東京で住宅街を歩いていても、このような配水塔の姿を見かけることはほとんどない。今でも給水に水圧が必要なのは変わっていないはず。なぜだろうと思ったら、今では配水塔の担っていた役割はポンプに置き換えられているのだという。道理で配水塔という存在を見かけないわけだ。
2022年3月 建築 東京 | |
バス停 江古田 住宅街 塔 |
No
12195
撮影年月
2022年1月
投稿日
2022年03月05日
更新日
2023年08月15日
撮影場所
江古田 / 東京
ジャンル
建築写真
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS LOXIA 2/35