筋骨隆々の男が上半身裸で口を固く結びつつ武器を手にしているのを目にしたら、一目散に逃げるのが妥当策だろう。追いかけられたら逃げ切れるかどうかわからなくても、係わり合いを持ちたくないと思う人が大多数に違いない。触らぬ神に祟りなしだ。中には力自慢の人もいて、勝負してみたいと考える人もいるかも知れないが、おすすめはできない。
板橋の赤塚にある乗蓮寺の山門に安置されている仁王像は、そのような町中で見かけたら逃げること間違いなしの出で立ちをしていた。仕方がない。仁王は仏教の守護神だ。武器を手に睨みを効かせながら境内に仏敵が入り込むことを防いでいるのだ。
仁王も四天王などと同じくバラモン教とヒンドゥー教の神が仏教に取り入れられて、仏法を守護する神と考えられるようになったものだ。サンスクリットではヴァジュラパーニとかヴァジュラダラと呼ばれる。さらに起源を遡ると、仁王のモデルはギリシャ神話の英雄ヘラクレスであるとされるというからにわかには信じがたい。ガンダーラにおける仏像製作と同じようにヘレニズム文化の影響を受けて仁王が誕生したのだという。
そのような話を耳にすると、あちらこちらに寺院の入口に立つ仁王が遠い外国から仏閣を守るためにやって来た傭兵のように見えてきて、頼もしいと同時に労わなくてはいけないような複雑な気分になった。
2021年10月 静物 東京 | |
赤塚 像 険しい顔つき 刀 寺院 金網 |
No
12062
撮影年月
2021年4月
投稿日
2021年10月17日
更新日
2023年08月17日
撮影場所
赤塚 / 東京
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF