ホーチミン市チョロン地区、温陵会館の境内。装飾の施された木の梁と瓦屋根の下、ひとりの僧侶が戸口に立っていた。袈裟をまとい、眼鏡をかけたその姿は、どこか現代的でもあり、同時に千年の時間を背負っているようにも見えた。
ベトナムという国は、社会主義体制のもとにありながら、宗教の自由が認められている。街を歩けば、仏教寺院だけでなく、カトリック教会の尖塔や、ベトナム独自の信仰であるカオダイ教やホアハオ教の施設も目にすることができる。信仰は排除されるのではなく、柔らかく、生活のなかに息づいている。
ふと、カール・マルクスの言葉が思い浮かんだ。「宗教はアヘンである」と。あの一節は誤解されがちだが、本来は苦しみの中で人間が拠り所として宗教を求める、その現実への観察に満ちていた。薬物が人を廃人にするのなら、宗教はあるいは、人を支え、社会と接続し直す装置にもなり得るのかもしれない。
2009年6月 人びと ベトナム | |
眼鏡 ホーチミン市 袈裟 僧侶 寺院 |
No
2861
撮影年月
2009年3月
投稿日
2009年06月05日
更新日
2025年06月16日
撮影場所
ホーチミン市 / ベトナム
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM