巣鴨にある高岩寺の門の前に、一人の僧侶が立っていた。袈裟をまとい、深く編笠をかぶっている。その編笠が影を落としているせいで、顔はほとんど見えなかった。僧侶は門前で辻立ちしながら、托鉢をしていた。
多くの参拝客は僧侶の前を何事もないかのように素通りしていった。けれど、中には立ち止まる人もいる。写真の中のおばあさんも、そのひとりだった。幼い孫を抱えたおばあさんは、僧侶の前にそっと近づき、何かを話しかけ始めた。僧侶はしばらく耳を傾けていたが、やがて静かに手を差し出すと、その赤ちゃんの頭をそっと撫で始めた。
撫でられている赤ちゃんの顔には、言葉にできないような純粋な喜びが浮かんでいた。その表情は、何か特別なご利益を受けているようにも見えた。赤ちゃんの頭に触れる僧侶の手の動きは、とても柔らかく、静かだった。それは単なる仕草を超えて、どこか祈りのようなものを感じさせるものだった。
2017年5月 人びと 東京 | |
赤ちゃん 編笠 袈裟 僧侶 巣鴨 |
No
10140
撮影年月
2007年10月
投稿日
2017年05月13日
更新日
2024年12月06日
撮影場所
巣鴨 / 東京
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
CANON EOS 1V