ジャカルタを歩いていた。日差しは強いものの、歩道に植えられている街路樹が少しは弱めてくれていた。でも、暑いからなのか、この辺りに用がある人が少ないからか、歩いている人は少なかった。すぐ近くには大きな宗教施設があるのだけれど、そこを訪れる人もあまりいないようだ。
人通りのない道端に口髭を生やした男が腰を下ろしていた。フェンス際にどっしりと座って、携帯電話で誰かと話をしていた。周りにはデスクも何もないけれど、仕事しているかのような雰囲気だった。男は僕と目が合うと、携帯電話を耳に当てたまま、眉間に皺を寄せた。堂々としたその佇まいに、僕は大事な仕事の邪魔をするなと言われたような気がした。まるで忙しくて機嫌の悪い上司の部屋に入りんでしまったかのようなばつの悪さを感じた。
男の力強い視線にドギマギしながら、よく見てみると、男が耳に当てていたのはスマートフォンではなく、ちょっと古いタイプの折り畳み式の携帯電話だった。ジャカルタでもスマホはすでに一般的だけれど、男は頑なに古い携帯電話を使い続けるタイプの人かもしれない。そう思うと、男の視線が益々力強く感じられた。
2020年7月 インドネシア 人びと | |
携帯電話 ジャカルタ 男性 口髭 ポロシャツ |
No
11610
撮影年月
2020年1月
投稿日
2020年07月20日
更新日
2023年09月01日
撮影場所
ジャカルタ / インドネシア
ジャンル
ポートレイト写真
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF