市場へ戻る途中の住宅街には雑貨屋だけでなく、小さな食堂も営業していた。建物自体に厨房がなく、店先に置かれた移動式屋台で調理したものを屋根の下に置かれたテーブルに就いて食べるようになっている屋台を拡張したような食堂だ。
移動式屋台の横に男が立っていて何やら調理していた。でも、テーブルには誰も就いていない。料理していた男のすぐ後ろにポロシャツを着た男が立っているだけだ。料理人はポロシャツの男が注文した料理を作っている最中のようだ。
料理ができあがるのを待っていた男は柱につかまりながら遠くを眺めていた。その顔はどこかしら不安そうだ。もしこれが映画のワンシーンなら、男が眺めている方向から穏やかな住宅街の平穏を破るものがやって来る不吉な導入部分になるのだろうけれど、これは現実。不吉な物語が始まることはない。男の不安は男の中で自己完結してしまって、この穏やかな雰囲気が壊されることなどはない。人間よりも予兆に敏感なはずの猫も、移動式屋台の下で寝転がったままだった。
2021年1月 インドネシア 人びと | |
不安 エプロン 猫 チルボン 男性 ポロシャツ レストラン |
No
11799
撮影年月
2020年1月
投稿日
2021年01月27日
更新日
2023年08月29日
撮影場所
チルボン / インドネシア
ジャンル
スナップ写真
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF