南勢街西羅殿の境内には仮設の舞台が設けられ、京劇らしき伝統演劇が上演されていた。舞台の前には観客用の椅子が整然と並べられているものの、全席が埋まっているわけではなかった。演者たちの華やかな衣装や独特なメイクから察するに、上演されているのは由緒ある演目のようだが、観客の数は控えめだった。この時代、テレビや映画といった娯楽が普及した結果、伝統演劇が人々の関心を引くのは容易ではなくなっているのだろう。
そんな中、赤いシャツとズボンを身にまとった小さな女の子が一人、観客席でじっと舞台を見つめていた。周囲の動きには一切気を取られず、舞台の世界に引き込まれている様子だ。その真剣な表情からは、彼女が演劇に深く魅了されていることが伝わってくる。一方で、女の子の靴に描かれたキティちゃんは、どこか無表情で、彼女の没入ぶりとは対照的だった。
演劇という古い文化が、ひとりの子どもの心に静かに響いているその瞬間は、伝統が次の世代へと受け継がれていく可能性を感じさせる。キティちゃんの冷静さをよそに、女の子は舞台の物語に夢中だった。
2017年3月 人びと 台湾 | |
女の子 赤 履物 台南 |
No
10071
撮影年月
2016年9月
投稿日
2017年03月14日
更新日
2025年01月22日
撮影場所
台南 / 台湾
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
EF85MM F1.2L II USM