濡れた道路を女の子が厚底の靴をはいて歩いていた

厚底の靴を履いた女の子
厚底の靴を履いた女の子

歴史は繰り返すというが、どうやら本当らしい。新宿の濡れた街路を歩いていた。すると、かつて流行って廃れていった厚底の靴が、時を超えて再び息を吹き返しているのを目撃した。僕の目の前を、白くていかにも歩きづらそうな靴を履いた女の子が、何食わぬ顔で闊歩している。厚底の靴といえば、16世紀のベネチアの歴史が面白い。当時は貴婦人が泥でドレスを汚さないために、チョピンという高い下駄のような靴を履いたらしい。それが現代の日本の路上で、お洒落の道具として幾度も浮上してくるのだから妙なものである。

そのお洒落の道具として幾度も浮上してくる厚底の靴だが、実用性という意味では首を傾げざるを得ない。写真を見ても分かる通り、路面は雨でしっとりと濡れている。いかにも滑りやすそうだ。そんな悪条件下で高下駄のような靴を履いていれば、いつ足を滑らせて無様に転び、足首をグキリと挫いてしまうか分かったものではない。かつて1990年代のブーム時にも、多くの若者が駅の階段や街角で捻挫を連発したという。整形外科が大繁盛したという話もあるほどだ。お洒落にまるっきり無縁な僕としては、他人の足首の健康状態を勝手に案じてしまう。余計なハラハラを強いられる日々がまた始まってしまうのかと、いささか憂鬱になる。

そのいささか憂鬱になる僕の心配をよそに、ピンクの傘を差した彼女はスタスタと歩く。フリルのついた大きな鞄を肩にかけ、何事もないように横断歩道を渡っていく。鞄の脇には白いウサギのぬいぐるみがぶら下がっていた。それが彼女の歩行に合わせて頼りなく揺れている。お洒落をするというのは、傍目から見るよりもずっと過酷だ。まるで苦痛を伴う修行のようなものかもしれない。ただ、僕は彼女がマンホールの蓋で滑って転ばぬことだけを冷ややかに祈るだけだった。

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ENGLISH
2015年7月 人びと 東京
女の子 ピンク 新宿 履物

PHOTO DATA

No

9365

撮影年月

2015年6月

投稿日

2015年07月16日

更新日

2026年07月12日

撮影場所

新宿 / 東京

ジャンル

ストリート・フォトグラフィー

カメラ

SIGMA DP2 MERRILL

日本国内で撮影した写真

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