仮設の舞台では、京劇のような伝統演劇が繰り広げられていた。境内に設置された簡素な椅子に座ってじっくりと観劇している人も少なからずいたが、大半の人々は立ったまま舞台を眺めていた。観客の様子から察するに、演じられているのは誰もが知る有名な演目である可能性が高い。舞台から響く音楽やセリフが境内全体に広がり、日常の空間を一変させていた。
一人の年配の女性もまた、舞台の世界に引き込まれるように立ち尽くしていた。彼女の背中には幼い男の子がしっかりと背負われている。女性は真剣な表情で舞台を凝視し、その集中力は周囲の喧騒を忘れさせるほどだった。そして彼女の背中に乗る男の子も、まるでその真剣さが伝染したかのように、じっと舞台の方向を見つめている。
どちらも言葉を発することなく、舞台で展開される物語に没頭している様子だった。二人が見ている視線の先にある演者たちの動きや音色は、彼らの心にどのような情景を描いていたのだろうか。日常のひとコマが、仮設舞台の上で演じられる劇によって特別な時間へと変わっているのかもしれない。
2017年3月 人びと 台湾 | |
観衆 男の子 老婆 台南 |
No
10072
撮影年月
2016年9月
投稿日
2017年03月15日
更新日
2025年01月22日
撮影場所
台南 / 台湾
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
EF85MM F1.2L II USM