水仙宮市場の通路の入口に立って周囲を眺めていた。昼間の喧騒はとっくに過ぎ去り、市場は静まり返り、閑散とした空気が漂っていた。働いている人々も急ぐ様子はなく、どこか穏やかでゆったりとした時間を過ごしているようだった。その光景には長閑な雰囲気が満ちていたが、僕には少し物足りなく感じられた。
市場に来るときには、いつもその喧騒の中に身を置きたくなる。店主たちの声が響き渡り、どこかから客引きの声が飛び交う、活気に満ちた空間こそが市場の醍醐味だ。そんな中で何を言っているか分からない会話を交わしながら歩くのが好きなのだ。
来る時間を間違えたかなと思いながら通路を見ていると、先からバイクが現れた。乗っているのは年配の女性だった。穏やかな微笑みを浮かべた彼女が僕に向かってゆっくりと近付いてくる。その笑顔にはどこか温かみがあった。
その表情を眺めていると、喧騒を求めていたはずの僕の心も自然と落ち着いていった。閑散とした市場も、こうして静けさの中で誰かの穏やかな笑顔に出会えるなら、それはそれで悪くないものだと思えてきたのだった。
2017年3月 人びと 台湾 | |
犬 眼鏡 ヘルメット 市場 バイク 老婆 笑顔 台南 |
No
10063
撮影年月
2016年9月
投稿日
2017年03月07日
更新日
2025年01月23日
撮影場所
台南 / 台湾
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
EF85MM F1.2L II USM