惣菜屋を後にして通路を進んでいくと、食べ物の屋台が出ていた。この屋台は大勢やってくる買い物客を目当てにクロントゥーイ市場中央付近の通路で商売をしていた。なかなか食堂のようなものは市場の中に見当たらないけれど、やはりどこの国でも市場には食べ物を出す屋台はつきものなのだ。
屋台のワゴンの上には、金属製のボウルがいくつも並んでいて、どのボウルにも具材が入っている。さらには端には大きな鍋も備え付けられていた。中ではお湯が沸き立っている。
鍋の間に立っている女性は一心不乱に鍋の中に入れたおたまを動かしていている。おそらく女性は麺を茹でているのだろう。鍋からは湯気が立ち上がっている。タイには日本の冷やし中華のような料理はあまりないから、この屋台で出している麺も熱々のものなのだろう。
暑い日に熱々の食べ物を食べるのは味なものに違いない。そういえば、僕もついさっき市場近くの食堂で熱々の麺を汗をかきながら腹に入れたばかりだった。自分が食べたばかりだったせいもあるけれど、夏バテを考えたら暑い日には暑いものを食べるに限るような気もする。
日本の夏の風物詩のひとつに「冷やし中華はじめました」という看板がある。蒸し暑い日に少しでも涼しくなるために食す人は多いだろう。でも、大きなチャイナタウンがあって、多くの華僑が住んでいるバンコクには冷やし中華なるものは存在しない。冷やし中華は名前とは裏腹に日本発祥の料理だからだ。
中国にも涼麺という冷たい麺があるけれど、一般的には冷やし中華は東京の揚子江菜館と仙台の龍亭というお店が発祥とされている。中国の人は冷たい食べ物を好まないから、冷やし中華のような料理が発展しなかったのだろう。
中国では冷たい食べ物は死者が食べるもので縁起が悪いという意味合いがある。さらには、冷たいものは身体に悪いと考える人も多いようだ。そのような中で、お寿司が受け入れられているのは例外中の例外のようだ。
No
11426
撮影年月
2019年9月
投稿日
2020年03月02日
撮影場所
クロントゥーイ市場 / タイ
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
RICOH GR III
モノクロの写真を108枚掲載。もちろんKINDLE UNLIMITEDでも読めます。