東京の湯島を湯島天神に向かって歩いていた。ふと脇道に目を向けると石造りの壁に沿って鳥居が建っているのが見えた。神社があるようだ。どのような神社があるのか気になった僕は進路を変更してその鳥居のところへ向かった。
途中に蚊取り線香が置かれていた階段を登ると境内があって、所狭しと祠や神殿、拝殿が建っていた。妻恋という名の神社だった。妻恋とは夫婦が互いに相手を恋い慕うこと。なんだか素敵な響きのする神社だ。
境内はとても小さかった。参拝がてらに境内をウロウロしようにも、ウロウロする場所さえないような神社だ。しかしながら由緒は正しい。なんでもヤマトタケルが父・景行天皇に命じられた東北への遠征を果たした帰途、海神を鎮めるために海に身を投げて一行を救った妃・オトタチバナヒメの死を、この地から「妻恋し」と海を眺めながら嘆いたのがはじまりなのだそうだ。
ロマンチックな話だ。ただ残念なことに妻恋神社で周囲を見回してもどこにも海は見えない。江戸時代以前、本郷台地の端にある湯島の東側一帯は海だったものの、海岸線はとっくの昔にここから遠く離れたところに移動してしまっている。今となっては、ヤマトタケルと同じように海を眺めながら思いを馳せることはできないのだった。
2021年5月 静物 東京 | |
神社 階段 渦巻き 湯島 |
No
11914
撮影年月
2020年9月
投稿日
2021年05月22日
更新日
2023年08月22日
撮影場所
湯島 / 東京
ジャンル
静物写真
カメラ
RICOH GR III