写真に写っているのは、オーギュスト・ロダン作の代表作のひとつ「カレーの市民」の一部である。場所は東京・上野にある国立西洋美術館の屋外展示スペース。オリジナルの鋳型から制作されたエディションは全部で12体とされ、上野に置かれているものもその正統な一体だ。1953年に鋳造され、1959年にここへ設置されたというから、気がつけば半世紀どころか、もう立派に還暦を越えている。都会の喧騒を背中で聞き流しながら、ずいぶん長いあいだ同じ姿勢で立ち続けてきたわけだ。
それにしても、当時の学芸員は相当にロダンが好きだったに違いない。館内外を見回せば、「考える人」や「地獄の門」など、ロダン作品がいくつも鎮座している。まるで「せっかくだから全部置いてしまおう」とでも言ったかのような配置である。もっとも、訪問者の多くは華やかな企画展に吸い寄せられ、この屋外の彫刻群の前を、まるで待ち合わせ場所を通り過ぎる通勤客のように素通りしていく。
「カレーの市民」は、百年戦争中にフランスの港町カレーを救うため、命を差し出す覚悟で名乗り出た市民たちを題材にした作品だという。英雄的というより、むしろ疲れ切った中年男性たちの集団に見えるところがロダンらしい。筋肉は誇張され、指先は神経質に曲がり、決意と後悔が同居している。
| 2005年12月 静物 東京 | |
| 作品 博物館・美術館 彫刻 上野 |
No
259
撮影年月
2005年11月
投稿日
2005年12月05日
更新日
2026年01月08日
撮影場所
上野 / 東京
ジャンル
静物写真
カメラ
CANON EOS 1V