歩いているうちにカオサン通りに辿り着いた。ここは相変わらず賑わっている。両脇に外国からの旅行者向けのレストランやバーが立ち並んでいて、大勢の旅行者が道を行き来している。
道に出ている大きな看板は、どれもこれも英語で書かれていて、まるでアメリカのどこかの町のよう。実際、ベトナム戦争の間、タイはアメリカ軍人の休暇先で、大勢の軍人がつかの間の休息をこの国で取っていた。バンコクからほど近いパタヤはその時に大きく発展したのだという。しかしながら時は流れて、カオサン通りを歩いても軍人を見かけることはないし、そもそも戦争を連想させるものは何もない。漂っているのは至って平和な空気だった。道路の真ん中にしゃがんで写真を撮ろうとしていたら、ショートパンツ姿の女性が僕を追い越して行くのが見えた。
オープンカフェやオープンレストランなどが軒を連ねるカオサン通りは、タイはおろか東南アジア随一の安宿街だ。正確にいうと「だった」と書くべきだろう。安宿街というと、安いホテルが軒を連ねているだけでなく、貧乏旅行者にとって利用価値の高いお店が並んでいるというイメージだ。かつてのカオサン通りには安宿はもちろん、航空券を購入するための旅行代理店、衣服を洗ってくれる洗濯屋などが幾つも営業していて、これぞ安宿街という雰囲気だった。僕もカオサン通りの旅行代理店で北京までの航空券を購入し飛んで行ったものだ。
しかし時は流れて、僕が初めてやって来たときとカオサン通りの様子もすっかり変わってしまったような気がする。通りを歩いても安宿は見当たらないし、旅行代理店も見当たらない。通りに面しているのは外国人向けの小洒落た食べ物屋ばかりになっているのだ。これも時代の趨勢なのだろう。下川裕治さんの本を読んでいると、カオサン通りが安宿街として名を上げるまでは、チャイナタウンに安宿が集まっていたようだ。でも、今ではチャイナタウンに安宿のイメージはまったくない。それと同じようにカオサン通りももう少ししたら安宿街のイメージが無くなってしまうのかもしれない。
ちなみにカオサン通りから消え去ってしまった安宿たちがどこに移転したのかというと、道を数本入った路地の奥の方に移動しているようだ。貧乏旅行者がいなくならない限り、安宿の需要はなくならないに違いない。
2018年9月 町角 タイ | |
バンコク ハイヒール 脚 看板 |
No
10731
撮影年月
2017年9月
投稿日
2018年09月14日
更新日
2024年02月01日
撮影場所
バンコク / タイ
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
SONNAR T* FE 55MM F1.8 ZA