韓国の古都慶州の郊外に、世界遺産に登録された仏教寺院がある。仏国寺だ。新羅時代に創建されたこの寺は、由緒正しさだけで言えば相当な古株だが、その歩みは一直線ではない。時代が下り、李氏朝鮮が成立するより前に、すでに廃寺同然になっていたらしい。ところが、その中途半端な不遇が功を奏したのか、李氏朝鮮時代に吹き荒れた仏教弾圧の嵐を、仏国寺は半ば忘れられた存在としてやり過ごした。目立たないことも、時には長所になるらしい。そうして近代に入ってから復興が進み、今では立派に世界遺産の肩書きを背負っているのだから、歴史というものは気まぐれだ。
境内をうろうろしているうちに、空模様が怪しくなり、やがて雨が降り出した。傘を持たない旅人としては、軒下に退避する以外に選択肢はない。瓦屋根を打つ雨音を聞きながら、これもまた仏国寺見学の一部だと思うことにした。日本の寺院建築と同じく、屋根の反りや斗栱の組み方には意味があり、雨の日はそれがよく分かる。水を遠ざけ、木を守るための知恵が、何百年も前から蓄積されているのだ。
ふと、1765年に再建された仏国寺の本殿、大雄殿に目を向けると、堂内に人影が見えた。いつ止むとも分からない雨をやり過ごすなら、廊下の屋根の下よりも、本堂の中のほうが少しばかり徳が積めそうな気がする。もっとも、徳が積めるかどうかは本人の態度次第で、場所の問題ではないかもしれないけれど。
| 2008年10月 町角 韓国 | |
| 人影 慶州 お堂・ホール 屋根 寺院 世界遺産 |
No
2148
撮影年月
2008年7月
投稿日
2008年10月28日
更新日
2026年01月05日
撮影場所
慶州 / 韓国
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM