浅草寺はいつも通りの喧騒に包まれていた。外国からの観光客も目立ち、その混雑はどこか国際的な賑わいを感じさせる。金堂へと続く参道は、参拝客で埋め尽くされ、絶え間ない流れを作っている。その中心に位置する香炉からは、黙々と煙が立ち上っていた。次々と線香が投入され、炎は不思議と衰える気配を見せない。それは、ここに集う人々の祈りが途切れることなく続いていることを象徴しているようにも思えた。
参拝客たちは、金堂へ向かう前に香炉の前で足を止める。その様子を眺めていると、一組のカップルが目に入った。二人は香炉の前に立ち、何か小さく言葉を交わしているようだ。彼らのシルエットは、立ち上る煙の中に浮かび上がっていた。その姿は現実の一部でありながら、どこか夢のような、幻影じみた印象を残していた。
煙は、祈りと同じように目には見えない何かを運んでいるのだろうか。あるいは、この場所自体が、時間や人の境界を曖昧にする特別な空間なのかもしれない――そんな考えが頭をかすめた。金堂へと続くその道筋が、果たしてどこへ通じているのか、実際のところ誰も知らないのではないかという気さえした。
2017年6月 人びと 東京 | |
浅草 カップル 浅草寺 シルエット 煙 |
No
10189
撮影年月
2016年11月
投稿日
2017年06月25日
更新日
2024年11月25日
撮影場所
浅草 / 東京
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
SONNAR T* FE 55MM F1.8 ZA