住宅街の中を歩いていると、静けさの中に突如として騒々しい音が響いてくる建物を見つけた。それは町工場だった。入り口の扉は開け放たれていて、中の様子がよく見える。内部には、いくつもの車輪のような機械がずらりと並び、休む間もなく動いている。そして、その機械の合間を縫うように、ふたりの女性が忙しそうに作業をしていた。
一体何を作っているのかは分からなかった。それでも、動き続ける機械と働く人たちの様子から、この町工場が景気良く稼働していることだけは明白だった。
僕は入り口に立ち止まり、中の様子をじっと眺めていた。けれども、働くふたりの女性は、僕の存在にはまったく気が付かないようだった。いや、気が付いているのかもしれないが、手元の作業を優先しているのだろう。彼女たちは視線を手許に据えたまま、無駄口ひとつ叩かず、機械とともに流れるように仕事を続けている。
目の前の活気ある光景を眺めながら、ふと視線を奥へ移すと、神棚が見えた。その中には、一体の神様が祀られていた。工場内で唯一静寂を保ち、騒音や忙しさに飲み込まれることなく、悠然とそこに鎮座している神様。その存在だけが、僕の視線に気付いているように思えた。ふとした瞬間に感じる不思議な気配が、工場の喧噪と対照的に、どこか神秘的に思えたのだった。
2017年3月 人びと 台湾 | |
祭壇 工場 台南 女性 |
No
10061
撮影年月
2016年9月
投稿日
2017年03月05日
更新日
2025年01月23日
撮影場所
台南 / 台湾
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
EF85MM F1.2L II USM