ホーチミン市チョロン地区、温陵会館の奥。重く彫りの深い柱と、艶やかな装飾に囲まれた祭壇のひとつの前で、ひとりの女性が立ち尽くしていた。
女性は両手を高く掲げ、束ねた線香をまっすぐに伸ばして祈りを捧げていた。静けさに包まれた堂内には、線香の煙が細く立ちのぼり、ほのかな香が漂っていた。
女性の持つ線香は、日本の寺院で見かけるものよりもずっと長かった。30センチほどはあっただろうか。その長さが祈りの時間を少し引き延ばしているようでもあり、煙の軌跡が空間に深みを与えているようにも思えた。
ひとつの祭壇、ひとつの動作、ひとつの瞬間。だがそこには、見慣れたものとは微妙に異なる文化の手触りがあった。それは言葉では説明しきれない、けれど確かに感じることのできる違いだった。
2009年6月 人びと ベトナム | |
ホーチミン市 線香 祈る 寺院 信仰 |
No
2859
撮影年月
2009年3月
投稿日
2009年06月05日
更新日
2025年06月16日
撮影場所
ホーチミン市 / ベトナム
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
CANON EOS 1V
レンズ
EF85MM F1.2L II USM