ミネラルウォーターやジュースを売る屋台の前を、携帯電話で話しながら忙しそうに通り過ぎていく女性を目にした。その屋台を改めて眺めてみると、飲み物だけでなく、パンも含めた食べ物も並んでいた。インドのパンといえば、日本では真っ先にナンが思い浮かぶかもしれないが、実際にはその種類は非常に豊富で、奥深い。ロティ、チャパティ、クルタ、パロタ、パラタといった名前だけでもすぐに挙げられるほどだ。
それだけではない。インドでは西洋にルーツを持つパンもよく食べられている。特にムンバイでは、ポルトガルの影響を受けたパンが根付いている。かつて西インドのゴアはポルトガルの植民地であり、その文化的影響は今でもさまざまな形で残っている。ポルトガル人にとって、小麦粉を使った白いパンはカトリックのミサに欠かせないものであったが、インドではイースト菌が容易に手に入らなかった。そこで彼らは試行錯誤の末、ヤシの樹液から作られるアルコール飲料「トディー」を使って発酵させる方法を編み出した。この技術によって作られるパンは、後にムンバイの人々の日常に溶け込み、今では「Pav Bhaji(パウバジ)」という名前で広く親しまれている。
パウバジはスパイシーな野菜のカレーをふわふわのパンと一緒に楽しむ料理で、老若男女を問わず人気がある。この屋台でも、ひょっとするとそんなインド独特のパン文化の一端に触れることができたのかもしれない。
2025年1月 町角 インド | |
携帯電話 ムンバイ 出店 若い女性 |
No
12770
撮影年月
2024年5月
投稿日
2025年01月21日
撮影場所
ムンバイ / インド
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R V
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF