時間を潰すために稚児ヶ淵をしばらくウロウロしたものの、江の島岩屋へ入ろうとする人の行列は一向に減る様子はなかった。せっかく江の島の一番奥までやって来たのに、目玉の江の島岩屋の中に入るのは難しそうだった。江の島岩屋とは長い歳月を経て波の浸食で出来た洞窟で、江の島弁財天信仰の発祥の地とされるところ。かつては高僧や武将がここを訪れて祈願のため籠ったと伝えられている。今は何も祀られていないけれど、洞窟内が石仏や奇岩、句碑などを見られる観光スポットになっているのだ。
岩屋へ入る順番を待つ人の行列を見ながら僕は思った。仕方がない。岩屋は次回に江の島を訪れた際に入ることとしよう。そうして僕は踵を返して長い階段を上り、江の島の中を藤沢駅に向かって帰路に就くことにした。一段一段、階段を上っていく道筋はつらいもの。下っている時には笑顔だった人びとも、上っている時には笑っておらず、代わりに口から出てくるのは溜息と愚痴ばかりだった。
中には疲れ切ってしまったせいか、帰りは絶対にエスカーというエスカレータに乗ると息巻いている人もいた。でも可哀想に。それは決して叶わない。なぜなら普通のビルの中に設けられているものと違って、エスカーはエスカレータとはいえ、上りしかないのだ。そう。下りのエスカーというものは存在しない。どんなに疲れてしまっても、帰り道はすべての階段を自分の足で歩かねばならないのだ。
2022年11月 町角 神奈川 | |
藤沢 プラットホーム 駅 日溜り |
No
12396
撮影年月
2022年7月
投稿日
2022年11月14日
更新日
2023年08月10日
撮影場所
藤沢 / 神奈川
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF