ファタヒラ広場から北に向かったのは、見張り塔を見るためだった。「見張り塔」という単語を聞くと、ボブ・ディランの「見張り塔からずっと」という曲を思い起こす。盗人と道化が向かう、王子が見張っている塔は保守勢力を表しているとも言われるが、自分の人生の中では見張り塔から見張られたことも見張ったこともない。でも、なぜだか「見張り塔」という言葉には惹かれてしまう。こっそり覗き見ているような語感が、淫靡なものを連想させるのかもしれない。
30分ほどのんびり歩いていくと、視界の中にちょっと背の高い建物が目に入ってきた。それが1839年に建てられた見張り塔だ。かつて港の責任者が、この塔の上から船舶の港へとの出入りの監視と指示を行っていたのだ。
旧バタヴィアの見張り塔は、建設当時には眼を見張るような高さを誇っていたのかもしれないけれど、今となってはそれほど高い建造物ではない。うっかりしていると、わからずに通り過ぎてしまいそうだ。旧バタヴィアがジャカルタという名前に変わり、周囲からは港らしさが失われても、見張り塔はそこそこ交通量の多い通りの脇にひっそりと建ち続けているのだった。
2020年5月 建築 インドネシア | |
港 ジャカルタ 歩行者 塔 |
No
11530
撮影年月
2020年1月
投稿日
2020年05月17日
更新日
2023年11月27日
撮影場所
ジャカルタ / インドネシア
ジャンル
建築写真
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF