賑わいを見せる崇徳市場を後にし、次なる目的地「崇義黃昏市場」へと向かった。旅先で地元の人々の暮らしを知るには、市場が一番だと常々思っている。人びとの会話、品物を吟味する仕草、匂いと喧騒――市場にはその町の鼓動が詰まっている。
しかし、市場の入り口に足を踏み入れた途端、異変に気がついた。誰もいない。屋台のテーブルは片付けられ、シャッターが固く閉ざされたまま。賑わいの残滓すら感じられない。
市場の名前に「黄昏」と入っている通り、ここは夕方にならなければ活気づかないようだった。どうやら訪れるのが早すぎたらしい。薄暗い通路をひとり彷徨う。足音が響くほど静まり返った市場には、人の気配すらない。猫すらいない。
そんな静寂を破ったのは、一台のバイクだった。男が煙草をくわえながら、エンジン音を響かせ、市場の奥から現れる。こちらに目をくれることもなく、そのまま走り去っていった。
静寂に包まれた市場に、彼の影だけが一瞬だけ残った。再び音のない世界に取り残された僕は、台南の夕暮れの時間をひとり静かに待つしかなかった。
2017年2月 町角 台湾 | |
煙草 バイク シルエット 台南 |
No
10044
撮影年月
2016年9月
投稿日
2017年02月18日
更新日
2025年03月09日
撮影場所
台南 / 台湾
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
SONNAR T* FE 55MM F1.8 ZA