太陽の位置が段々と低くなっていくのと同時に、地面に伸びる影は徐々に勢力を伸ばしつつあった。路面のほとんどは既に影の勢力に飲み込まれていて、日向の範囲は道路沿いに建つ建物の壁にまで追い込まれている。そのようなせめぎ合いの中、女性が歩いているのが見えた。女性にとって影と日向のせめぎ合いは対岸の火事なのだろう。いや、どちらかというと影にシンパシーを感じているかもしれない。日焼を忌避する女性は多く、そのような女性は日向よりも日陰を歩くのを好む気がする。
この時歩いていたのは根津神社の近くだった。知らなかったのだけれど、かつて根津神社の門前に遊郭があった。1882年の調べでは688人の娼妓がいて吉原に次ぐ規模を誇っていたという。しかし、ここは天下の東京帝国大学のお膝元。風紀上、大学の近くに遊郭があるのは問題であるとされ、1888年に洲崎に移転させられてしまった。遊郭の存在そのものが問題視されたわけではなく、学生への悪影響が懸念されたのが興味深い。
2021年7月 町角 東京 | |
横断歩道 影 信号 女性 |
No
11961
撮影年月
2020年12月
投稿日
2021年07月08日
更新日
2023年08月20日
撮影場所
根津 / 東京
ジャンル
ストリート・フォトグラフィー
カメラ
SONY ALPHA 7R II
レンズ
ZEISS BATIS 2/40 CF